・開業届は出した方が良いの?
・独身か家族持ちかで変わる?
・出さないと罰則はある?
軽貨物ドライバーで開業するには、税務署で開業届を提出します。開業届を提出しないと事業では無いので、経費精算や補助金申請・青色申告ができません。
私は2022年に会社員を退職して、2023年から軽貨物ドライバーの個人事業主になり、直近に税務署で開業届けの提出をしました。
この記事では開業届を提出するメリット・デメリットを解説していきます。
最後まで読んでもらえれば、なぜ開業届を出すのか?何がメリットでどんなデメリットがあるのか?がわかるので、個人事業主としての知識が深まります。
メリット・デメリットをしっかり理解して、提出するのか・提出しないのか、どちらにしても迷いなくしていきましょう。
開業届の書き方についてはこちら ↓
【軽貨物開業】税務署に提出する開業届と青色申告申請書の書き方を徹底解説!
メリット・デメリットをしっかり理解してから、開業届は出してください。
開業届を提出する5つのメリット
開業届を提出すると、メリットの方が多いですがデメリットもあります。
メリット
- 青色申告ができる
- 事業の赤字を3年間繰越できる
- 家族への給料は経費にできる
- 屋号付きの銀行口座を作れる
- 小規模企業共済に加入できる
詳しく解説していきます。
青色申告ができる
開業届を提出する上で1番大きいメリットは『青色申告』ができることです。
青色申告は申請すれば所得から最大65万円を控除できる制度で、確定申告時や翌年の国民健康保険料などを節税できます。
個人事業主の手取りは
『売り上げ – 経費 = 所得』 です。
この所得(手取り)から所得税・保険料などが引かれていきますが、所得を65万円控除できればその分、所得税・保険料の金額も安くなっていきます。
例えば所得税の税率は以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% |
所得が250万円の人が青色申告で65万円の所得控除を受ければ、所得は185万円になるので税率は5%で済みます。
つまり青色申告をすれば、最大65万円をもらっているのと同時に節税にもなります。
同じような制度で『白色申告』がありますが、青色申告の方が節税効果が高いです。
青色申告を使えるようになるのは、開業届を提出するうえで1番のメリットとなります。
所得から最大65万円も控除できるのは大きいわ!
事業の赤字を3年間繰越できる
開業届を提出すると青色申告の恩恵で、事業の赤字を3年間繰り越すことができます。
事業を始めて間もない頃は、思うように売上が伸びず赤字経営をすることも少なくありません。
赤字を繰り越せると黒字になった時の年度から、赤字分を差し引いた利益で税務署に申告できます。
- 1年目が30万円の赤字
- 2年目が10万円の赤字
- 3年目が50万円の黒字
上記の場合は、『50万円 – 30万円 – 10万円 = 10万円』となるので、3年目の利益は10万円として税務署に申告できます。
所得税は利益に対して課税されるものです。
つまり納める所得税が減ります。
個人事業をしていると、毎年安定して黒字になるとは限りません。特に初年度は厳しい状況でしょう。
赤字を3年間繰り越せると、個人事業のリスクヘッジにもなるのでメリットの1つとなります。
赤字を繰り越せるから申告する所得が減って、所得税が少なくて済むのね!
家族への給料は経費にできる
家族を持っている人は開業届を提出した方が、独身の人よりもメリットがあります。
開業届を提出して青色申告も申請していると、家族への給料は『経費』にすることができるからです。
例えば奥さんや子供(15歳以上)が事業の手伝いをしたときに、給料として10万円出したとします。
その10万円は経費となるので、事業所得の対象では無くなり、課税対象になりません。
簡単に言うと、「家族に10万円の給料を払ったから利益じゃなくて経費。だから税金の対象にならないよね」ということです。
個人事業は税金との闘いでもあるので、家族への給料を経費にして課税対象を減らせるのは大きいです。
経費にできるから、課税対象にならないのね。
屋号付きの銀行口座を作れる
開業届を提出すると、銀行で屋号付きの銀行口座を作れるようになります。
「屋号付きの銀行口座だと何がメリットなの?」そう思う人も居ると思います。
メリットは次の3点です。
- 個人名義より信頼感がある
- 口座の使い分けができる
- 名刺に記載できる
個人名義より信頼感がある
個人事業で仕事をしたら、銀行振込で報酬が入金されます。
その時に個人名義の口座よりも、屋号付きの口座の方が信頼感が上がります。
例えば「山田太郎」より、「山田運送 山田太郎」の方が信頼できそうじゃないですか?
仕事をするうえで信頼感は大切です。屋号付きの銀行口座の方が信頼感があるのでメリットがあります。
相手先からの信頼感は、仕事の量に直結します。
口座の使い分けができる
屋号付きの銀行口座を作ると、個人用の銀行口座と使い分けができます。
個人事業主になると確定申告や、経費精算・帳簿の記帳が必要です。
その時に銀行口座が屋号付きの事業用・個人用で分かれていると、入出金の履歴を分けられます。
なので内容の把握が簡単になり記帳する際の手間が減ります。
銀行口座を使い分けられるのは、内容の把握・記帳の手間が簡単になるのでメリットの1つです。
個人用と事業用で分けた方が、管理もしやすくなるわね。
名刺に記載できる
屋号付きの銀行口座なら、名刺にも同じように記載できます。
名刺が屋号付き・銀行口座が個人名義だった場合、相手からするとデメリットはありませんが、何か違和感を感じるはずです。
個人事業主は仕事が勝手に振られてくるわけでは無く、競合相手と競って取りにいかないといけない場面が出てきます。
その時に能力・条件は全く同じで、何か違和感がある人と違和感が無い人とではどちらが選ばれるでしょうか?
自分なら違和感が無い人を選びます。
微々たる差に感じるかもしれませんが、選ぶ人が気にするタイプであれば大きな差になりかねません。
名刺・銀行口座共に同じにしておくと、違和感・認知の点でメリットになるでしょう。
小規模企業共済に加入できる
開業届を提出すると『小規模企業共済』に加入できるようになります。
小規模企業共済は、会社員で言う退職金のようなものです。
掛け金は1ヶ月に1,000円~70,000円までの間(500円単位)で積み立てを選択でき、事業を廃業・引退する時に積み立ててきた掛け金の金額に応じて、給付金を受け取れます。
小規模企業共済は優秀な制度で、以下のようなメリットがあります。
- 掛け金の全額が所得控除になる
- 退職所得控除を受ければ、節税になる
- 20年以上積み立てると、掛け金の100%以上の給付金として受け取れる
中小機構では、小規模企業共済に加入した際のシュミレーションができます。
自分が年齢を重ねていった時には、健康面・金銭面でどうなっているかは分かりません。
小規模企業共済に加入できるのは、老後の対策になるので開業届を提出する大きなメリットになります。
退職所得控除額は、『800万円+70万円×(勤続年数ー20年)』で分かります。
開業届を提出する3つのデメリット
開業届を提出するメリットをお話してきましたが、もちろんデメリットもあります。
デメリットは以下の3点です。
デメリット
- 失業給付を受けられない可能性がある
- 帳簿を付けるのが面倒
- 扶養に入れなくなる可能性がある
詳しく解説していきます。
失業給付を受けられない可能性がある
失業給付は会社で雇用保険に加入していた場合に、ハローワークで手続きすることにより給付金を受け取れる制度です。
ただハローワークのHPでは、次の文面が記載されています。
ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
<ハローワークインターネットサービス>
『就職しようとする積極的な意思があり』の部分ですが、個人事業主として開業するということは『就職』に該当しません。
つまり給付の対象から外れて、失業給付を受けられない可能性があります。
会社を退職して開業する場合は、失業給付金を受け取ってから開業した方が賢い立ち回りといえます。
帳簿を付けるのが面倒
開業すると事業になるので、確定申告のために帳簿を記帳する必要が出てきます。
記帳の仕方は確定申告の際に、『白色申告を使うのか・青色申告を使うのか』によって違ってきます。
- 白色申告 → 単式簿記
- 青色申告 → 複式簿記
単式簿記は1つの勘定科目についての増減を記録する方法。
複式簿記は仕訳をして「借方・貸方」に分けて記帳する方法です。
個人事業主になると、最低でも単式簿記で記帳する必要があります。記帳は普段の生活だとあまり馴染みが無い人も多く、開業してから困ることの1つです。
自分で1つ1つ考えて記帳するのは、かなり面倒ですし大変です。ただ会計ソフトを使えば、手間が大幅に軽減できます。
開業届を提出する際には、記帳の手間が増えて面倒というデメリットがあると理解してから、提出するようにしましょう。
青色申告を使うなら、複式簿記が必須です。
扶養に入れなくなる可能性がある
開業届を提出すると、扶養に入れなくなる可能性があります。
扶養とは主に、『健康保険に加入している世帯主から経済的援助を受けている人のこと』です。
奥さんや子供、働いていない両親などが該当します。
同一世帯に属している(同じ住居)場合、扶養に入る条件は以下のようになります。
- 対象者の年間収入が130万円未満
- 被保険者の年間収入を上回らない場合
被保険者の年間収入を上回らない場合、これは状況によってはクリアできそうです。ただ年間収入が130万円未満、これはかなり難しいです。
年間収入が130万円未満ということは、1ヶ月あたり約103,000円です。
個人事業主の収入とは『売上』のことで、利益である『所得』のことではありません。
個人事業主の所得は、売上から経費を引いたものが所得になります。
仮に次の条件でシュミレートしてみます。
・1ヶ月あたり103,000円の売上
・経費は23,000円
・税金は20%
売上 | 103,000円 |
経費 | 23,000円 |
所得 | 80,000円 |
税金 | 16,000円 |
最終的な手取り | 64,000円 |
仮に経費を23,000円とした場合、103,000円から23,000円を引いた、80,000円が手取りになります。
この手取りから税金を20%で払うと、おおよそ64,000円が手元に残ります。
64,000円のために開業するメリットはゼロで、普通にパートやアルバイトの方が、確定申告の手間も無く楽です。
扶養に入りたい・入る予定がある人は、開業届を出さずにそのまま扶養に入る方がメリットがあるでしょう。
開業届を出さなくても罰則は無い
実は開業届を提出しなくても、罰則はありません。
ただ国税庁のHPに以下の文面があります。
個人が新たに事業を開始した場合には、所得税および源泉所得税ならびに消費税に関する各種届出書等の提出が必要となります。
<国税庁:新たに事業を始めたときの届出など>
開業届は税務署に『所得税の納税方法が変わることを申告する書類』です。つまり提出が必要な書類に該当します。
現在は罰則は無くても、今後罰則が追加される可能性もあります。国税庁が公表している文面に記載があるのに、無視するのはかなりリスキーな行為です。
特殊な事情が無い限りは、『自分を守る・リスクヘッジ』にもなるので、開業届は提出した方が無難です。
【まとめ】開業届は提出した方が良い
結論として開業届は提出した方が良いです。
理由はデメリットよりもメリットの方が遥かに大きいから。
メリットは以下の5つです。
メリット
- 青色申告ができる
- 事業の赤字を3年間繰越できる
- 家族への給料は経費にできる
- 屋号付きの銀行口座を作れる
- 小規模企業共済に加入できる
1番のメリットは青色申告を使えること。
小規模企業共済へ加入できるのも大きいです。
デメリットは以下の3つとなります。
デメリット
- 失業給付を受けられない可能性がある
- 帳簿を付けるのが面倒
- 扶養に入れなくなる可能性がある
開業届を出すとメリットが多く、精神的にも個人事業主として意識するようになります。
事業をする際には開業届を提出して、恩恵を受けながら個人事業主として働いていってください。
開業届の提出方法と書き方はこちら ↓
【軽貨物開業】税務署に提出する開業届と青色申告申請書の書き方を徹底解説!